京アニ放火犯・青葉真司容疑者は自らが起こした火災によって重度のやけどを負いました。
”全身丸焦げ状態”だった容疑者を逮捕できるまで回復させた治療とは一体どういうものだったのでしょうか。
青葉容疑者を担当した、近畿大学医学部附属病院の主治医らが世界初とも言える「最新やけど治療」について語っています。
「全身の90%のやけど治療」が凄まじい…
青葉容疑者のやけどの大部分が「Ⅲ度」と呼ばれる重度のものだった。
「熱傷は、Ⅰ~Ⅲ度の3段階に分類されます。Ⅰ度は『表皮』という皮膚の表層のみに熱傷がある状態で、Ⅱ度は表皮の下の『真皮』まで及んでいる状態を指します。そしてⅢ度は真皮の下の皮下組織にまで熱傷が及ぶ状態です」(ナビタスクリニック立川皮膚科の佐藤典子医師)
一般的な熱傷治療の場合、まず患部を「人工真皮」で覆う。これは動物のコラーゲンなどから作られた、文字通り人工の皮膚のことだ。
ただ、それだけでは、体内の水分がどんどん漏出してしまう。そのため、人工真皮の上に、自分の細胞から作成した「培養表皮」を移植する必要がある。だが、これはすぐにできるわけではない。
「培養表皮は患者さんが必要とするような大きさに培養するまで、どんなに急いでも3週間はかかります」(日本熱傷学会専門医の原田輝一医師)
そのため、一時的に、他人の皮膚を人工真皮の上に貼り付けておく。これは、亡くなった人から提供された皮膚を保管しておく「スキンバンク」から受け取る。
そして、培養表皮が完成する頃には、他人の皮膚は自然とはがれ落ちるので、人工真皮の上から、その培養表皮を貼り付けるのである。
だが、青葉容疑者に対して、この一連の治療法がなされることはなかった。スキンバンクの皮膚が使えなかったからだ。
日本熱傷学会の元会長・百束比古医師が語る。
「スキンバンクは’91年から始まった制度です。救急救命センターなどで亡くなった方のご遺体から、ご家族の同意を得て、皮膚を採取し、保存する。そして今回のような事故や事件でやけどを負った人の治療に提供されます。
ただ、一番の問題は臓器移植と同様に、慢性的なドナー不足に陥っていることです」
今回の事件では、69名の死傷者が出た。そのほとんどが中度~重度のやけどを負っており、数少ないスキンバンクの皮膚は当然ながら、被害者の治療に優先的に回されることになった。
「(青葉容疑者の)治療を始めて、スキンバンクからの皮膚は使えないということがわかりました。そこで、『人工真皮だけでやろう』ということになったのです」(A氏)
人工真皮だけの手術は経験済みだった。A氏らのチームには、過去に全身の約70%にやけどを負った患者に、人工真皮だけで治療した経験のある医師がいたからだ。しかし、その時以上に今回のケースは過酷だった。
「これだけ広範囲を人工真皮で覆うというのは過去に例のない治療法だと思います。通常だとかなりの頻度で感染症を起こしたり、水分が体外に漏出することによって身体の電解質のバランスが崩れる。
多くの例で腎不全や肺水腫、多臓器障害などを起こし、短期間で致死的な状態になってしまうと考えられます」(前出・佐藤医師)
人工真皮で青葉容疑者の患部を覆い、その間は感染症予防を徹底した。24時間体制でスタッフが治療に当たり、体液の流出量を確認しながら、輸血などの対処を講じた。
「とにかく青葉容疑者を睡眠薬で一日の大半を強制的に寝かせることにした。そうしないと、彼が無意識に全身をかきむしってしまうのです。皮膚の状態があまりに酷いため、睡眠薬と栄養剤の2種類の点滴を入れるのに非常に苦労したようです」(前出・捜査関係者)
その間に培養表皮を生成し、移植していった。大がかりな皮膚移植手術は2~3回、それ以外に小規模な移植手術を何度も繰り返した。
しかし、青葉容疑者の容態は一向に安定しなかった。急に発熱を起こしたり、毎日のように激痛で唸ったり、嗚咽を漏らすこともあった。A氏がこう振り返る。
「治療を進めていくなかで、本当に多くのハードルや落とし穴がありました。1つや2つというレベルではありません。10個、20個という障害をひとつひとつクリアしながら、ようやく回復の兆しがみえてきたのです」
A氏らの懸命の治療の結果、8月中には命に別状がない状態になった。そうして青葉容疑者は11月14日に近大病院から、京都市内の病院へと転院していった。
青葉容疑者に「スキンバンク」が使われずに良かったというべきか…
かなり苦痛を伴う治療だったことは確かですね。
青葉容疑者には、火災の犠牲者の何倍もの痛みを背負ってもらいながら、法の裁きを受けてもらいましょう、、